2016年10月11日火曜日

「写ルンです」とコッククロフト・ウォルトン回路で高電圧発生装置

「写ルンです」のフラッシュ回路で乾電池(3V)から交流(約800V)を発生させ、
さらにコッククロフト・ウォルトン回路で6400V(計算上)の直流にまで昇圧させるという実験です。


(コッククロフト・ウォルトン回路でなぜ段数に応じて昇圧できるのか?
このページの下の方に考察もしています)

約6400Vってかなり危険じゃないの?と思いますが
電流はかなり少なく、人命に影響を及ぼすことはありません。
ただ、さすがに電圧が高いため、触ると大きな衝撃があります。

作品が出来上がってからよりも、カメラを分解する過程で
電解コンデンサに多くの電荷がたまったものを触るとかなり危険です。
(電解コンデンサ100uFは今回使用するセラミックコンデンサの約1万~100万倍の容量です。)
①分解前には充電用のスイッチを入れない。
②電解コンデンサをショートさせてから基盤に触れる。(やり方は下記参照)
必ずこの2点には注意して下さい。

使い捨てカメラ「写ルンです」です。

まず、ラベルの上部と下部にカッターナイフで切り込みを入れます。

下の方には電池が入っているので、抜き取ります。

カメラはネジ留めではなく、はめ込みになっているので、
爪の部分にドライバーを入れて、こじ開ける感じです。

ふたが開きました。

まずコンデンサをショートさせます。
下の写真のハンダ2ヶ所に同時にドライバーを当てます。
もし、電荷が残っているとバチッと音がしてショートします。
電荷が残ったままだと、かなり危険なので必ずやって下さい。


基盤を本体から取り外します。
基盤の真ん中あたりに爪があるので、爪をドライバーで押して基盤を持ち上げます。

外した基盤

電解コンデンサ、スイッチ、電池のプラス側の一部をニッパなどで切り取ります。
フラッシュは裏のハンダを溶かして外します。

裏側はこんな感じです。


                回路の仕組みは
     ①ダイオード1、トランジスタ、トランスの1部で交流(発振回路)に変換
     ②トランスで約300Vまで昇圧
     ③ダイオード2とコンデンサで直流に変換
     ④電解コンデンサ(100μF、耐圧300V)を充電する。(充電が完了するとLEDが点灯)
     ⑤シャッターが押されると、トリガーコイルを経由して
                             電解コンデンサの電荷がフラッシュのキセノン管に印加され発光する。

今回利用するのは、①~②のところです。
③の直流に変換する前のところで、交流電流を取り出します。

下図①の充電用のスイッチをハンダ付けします。
クリップなどで押さえておくとハンダ付けしやすいです。

直流に変換する前のところから取り出すため、
トランス両端の②'、③' にリード線を接続してもいいのですが、
ハンダしやすいように、②と③に接続しても大丈夫です。
はダイオードのアノード側
は電解コンデンサの付いていた上側の電極です。

表側はこんな感じです。

出力電圧は単3乾電池1本を接続した場合は約300~400Vの交流、
単3乾電池2本を接続した場合は約700~800V程度の交流になると思います。
交流と言っても綺麗な正弦波ではなく、ギザギザの高周波の交流です。
(ブロッキング発振回路)

今回は単3乾電池2本を繋いで、DC3V→AC800Vとします。

新品の単3乾電池1本を接続し、出力電圧を測定すると350Vが出ました。
高周波発振のため、誤差は大きいと思いますが・・・
今回作成する装置は、単3乾電池2本を使用するので、
入力電圧3V(直流)、出力電圧は700~800V程度(交流)になると思います。



カメラのフラッシュ回路の基盤(DC3V→AC800V)が準備出来たので
次にコッククロフト・ウォルトン回路(AC800V→DC6400V)を作ります。
(計算上6400Vですが、実際にはこの半分程度の電圧かな?と思います。)

準備するコンデンサ、ダイオードは入力電圧の2倍必要です。
(今回は耐圧2kV以上のコンデンサとダイオード)
コンデンサ容量は1000pF~10000pF程度でOKです。
(もっと幅広い容量のものでも大丈夫と思いますが、試していません。)

耐圧の高いコンデンサはあまり販売されていませんが、
「高耐圧コンデンサ」などで検索するといくらか出てくると思います。
例えば、
共立エレショップ
鈴商
E-Junction
(2016年10月時点の情報です。リンク切れになっていたらすみません。)

ダイオードは耐圧1kVまでのものが多く販売されていますので、
例えば
秋月電子通商
2本直列にして耐圧2kVとします。
(順方向降下電圧分も2倍となりますが、800Vに対して2V程度なので気にしなくていいですね。)

今回は、セラミックコンデンサ(耐圧2kV、4700pF) 8個と
ダイオード(耐圧1kV) 16本で回路を作りました。


回路は下の図のようなイメージです。


部品同士を直にハンダ付けしてもOKですが
ユニバーサル基盤を使っても大丈夫です。
(ブレッドボードは耐圧が低いので、NGと思います。)


尖らせたようにハンダ付けをすると、コロナ放電をして電圧ロスが出るので
なるべく、尖ったところが出来ないようにハンダ付けします。

高電圧発生装置を露出したままにすると、
触ったときやコンデンサが破裂したときに危険なので、ケースに納めます。

スイッチと出力用のコードの穴を開けます。
ハンダごて 又はカッターナイフを熱したものなどを利用して穴を開け
やすりやルーターで研磨すると綺麗になります。
トルグスイッチはネジ留め出来るものもあります。


カメラのフラッシュ回路の基盤、電池ケース、スイッチをハンダ付けします。
カメラの基盤の右側がプラス極です。

カメラの基盤とコッククロフト・ウォルトン回路(入力端子)を接続します。
接続箇所は上の回路イメージを参照下さい。


ミノムシクリップ付きのリード線をケースの穴を通して
コッククロフト・ウォルトン回路(出力端子)に接続します。


電池を入れてふたをすれば完成です。

トグルスイッチを入れると、放電します。




以前作った 静電気振り子なども動かすことも出来ます。


(静電気実験のときは発泡スチロールで作りましたが、高電圧装置は木で作成しても大丈夫です。)


<コッククロフト・ウォルトン回路について自由研究>
コッククロフト・ウォルトン回路は段数に応じて昇圧します。
今回は4段組んだので、
入力(AC800V) × 4段 ×2 = DC6400V となります。(計算上)
実際にはそれほど出ていないと思います。

コンデンサが完全に充電されるまでは、
コンデンサC1からC2へ、C2からC3へ・・・C7からC8へと
電荷が送られていきます。

Vinが上のときは、奇数目のダイオードは順方向なので電流が流れますが、
偶数目は逆方向で電流は流れません。
Vinが下のときは、その反対になります。
C1は交流電源に繋がっているので、+-の逆転が続きそうな気もしますが、
C2が存在するために、上図のC1の右側がプラスの状態を維持します。


 どのように、C1からC2へ電荷を受け渡していくのかを考えてみます。
4段で考えると、かなり複雑になるので、1段だけにしました。
1段だけだと、倍電圧整流回路そのものになりますね。
倍電圧整流回路でなぜ2倍の電圧が得られるのかもわかります。
Vinが上になると、C1は常にqになります。
Vinが下になったときに、C1からC2に受け渡す電荷の量は
q、1/2q、1/4q、1/8q、1/16q・・・と等比数列となっていて、
その和は最終的に 2q に収束します。

こうやって見てみると、充電されるまでにかなり時間がかかりそうな気もしますが、
高周波で発振しているため、ほんの一瞬で充電されます。


では完全に充電されたときの電圧について考えてみます。
 このようにコンデンサC2の左足からC8の右足の端子間電圧は8V0となり、
入力電圧の8倍の電圧を得ることが出来ます。

(完全に充電された状態)=(電荷の移動がない状態)なので、
ダイオードで結んだところの電位は等しくなっています。
一方、上の図で省略しているダイオードには2V0の逆電圧がかかっています。

コッククロフト・ウォルトン回路の問題は
東京大学の試験問題としても出されたことがあるようです。
http://www.riruraru.com/cfv21/phys/tup11f.htm




(Flashで作成しているため、スマホや携帯で見れない場合があります。)

17 件のコメント:

  1. いい勉強になりました。C2の電荷について重ね合わせの原理を当てはめてみました。この回路ではC1による寄与はq/2、電源による寄与もq/2なので、周期が一つ増えた時の電荷は、増える前の電荷の1/2+qになるというふうに納得しました。

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    1. 渡辺様、私の考えた考察にお付き合い下さってありがとうございます。
      読んで下さって、嬉しいです。
      そうですね、周期が一つ増えた時にC2に増える電荷量は、
      1/2q、1/4q、1/8q、1/16q・・・とその前に増えた電荷量の半分ずつになると考えました。

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    2.  そうなんですね。ただゼロ回目から1回目での増加量はqですのでここだけ合わないような気がしますが。
       C2の電圧がいずれ2V0になりますが、直感的に捉える為にC1の電気容量がC2よりも充分大きい場合を考えるとVinが下の時はC2を2V0で充電することになると考えられたことも納得の材料でした。

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    3. そうですね・・・私はC2以降は電源から直接電荷を受け取ることはなく、
      C1から徐々に受け取るのでは?と考えました。
      全てのコンデンサ容量をCとして
      まず、1周期目の上向きのとき、C1はq=CV0、C2は0
      1周期目の下向きのとき、C1の電荷量をQ1、、C2の電荷量をQ2とすると
      Q1+Q2 = q
      V0 + Q1/C - Q2/C = 0
      これを解くと、Q1=0、Q2=q
      2段目以降も同様に計算していくと
      Q2は、q、3/2q、7/4q、15/8q、31/16q・・・となり
      増加分は q、1/2q、1/4q、1/8q、1/16q・・・と
      その前に増えた電荷量の半分ずつになると考えました。

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    4. C1の静電容量がC2よりも充分大きい場合ですが、
      例えばC1の静電容量が100C、C2の静電容量がC とします。
      まず、1周期目の上向きのとき、C1はq=100CV0、C2は0
      1周期目の下向きのとき、C1の電荷量をQ1、、C2の電荷量をQ2とすると
      Q1+Q2 = q
      V0 + Q1/100C - Q2/C = 0
      q=100CV0
      これを解くと、Q1=99/101q、Q2=2/101q となり、
      大半はC!に電荷が残りそうな気がします??

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    5. 充電されたコンデンサを回路に組み入れ、
      個々のコンデンサの電荷量を求める計算は
      このサイトの一番下に書いてあるものなどが参考になります。
      http://www4.osk.3web.ne.jp/~moroko/physics(elec)/condenser/condenser.html

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  2. ホームページ拝見しました。有り難うございました。
    「C2以降は電源から直接電荷を受け取ることはなく」。私にはこの視点が欠けていました。

     私の考えです。初期条件、電源電圧0、C1、C2の電荷0です。周期をTとします。
    0 Tから1/4Tの時まで電源電圧が上がり続けるのでD1がON、1/4Tの時C1に電荷qがたまります。

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  3. 1/4Tから2/4Tの時まで電源電圧が下がり続けるのでD1がOFF、D2がONになり、C1からC2へ電荷が移動し、2/4Tの時にC1、C2の電荷がq/2づつになります。
     理由は電気容量が等しいことと電源、D2を介してC2はC1に並列接続されている考えてよいからです。

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  4. 2/4Tから3/4Tの時までD1がOFF、電源電圧は逆向きに上昇し続けるのでD2がONになりC1からC2へ電荷の移動が進みます。この時電源からの電流はC1の電荷を減らしC2の電荷を増す向きです。3/4Tの時にC1の電荷は0、C2の電荷がqになります。
     理由は電気容量が等しいことと電源、D2を介してC2はC1に直列接続されている考えてよいことから、これに重ね合わせの原理を使ってみると電源からの供給電荷はともにq/2、電荷の符号も考慮して、2/4Tの時に重ね合わせるとC1の電荷は0、C2の電荷がqになります。

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  5. 3/4Tから4/4Tの時までD1がOFF、電源電圧は逆向きのまま下降し続けるのでD2がOFF
    になり次の周期を迎えることになります。

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  6. 次の周期ではC1にqが充電され並列接続分としてC1、C2にq/2づつ、電源からの直列接続分としてC1に-q/2、C2にq/2 、前1周期分のC2の電荷qも1/2づつ配分されたとしてC1にq/2、C2にq/2  合わせるとC1にq/2、C2に3q/2 になります。

    更に次の周期では同じように考えてC1にはq/2+(-q/2)+3q/4=3q/4
    C2にはq/2+q/2+3q/4=7q/4 を得ます。

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  7. C1の静電容量がC2 より充分大きい場合ですが私のことば足らずです。
    C1の電荷は少ししか減りませんのでC2の電圧は1周期分だけでも限りなく2V0に近づけることができます。現実には電位差を短時間で稼げても取り出し得る電流は極小ですから単なるイメージです。

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  8. 「その前に増えた電荷量の半分ずつになると考えました。」此処もきちんと捉えていませんでした。すみません。気付くのが遅すぎました。

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    1. いえいえ、とんでもないです。
      私自身、自分の考え方が正しいとは思っていません。
      もちろん、こんかな~?と思い 投稿したものではありますが・・・
      なので、ご意見を書いて頂けると、とてもありがたいし、勉強になります。
      どうかこれからも宜しくお願いします。

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  9. こちらこそ宜しくお願い致します。
    趣味で畑仕事をしていますが理科はこともの頃から好きで今でもキョロキョロ見ながら歩いています。だから、よく躓きます。

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  10.  コッククロフト・ウォルトン回路作ってみました。お陰様で約1cmで放電が継続しています。本当に有難うございました。上橋さんの実験がなければ試そうとも思わなかった私です。
     カメラら部品をまだ探せていませんので昔真空管アンプに使った電源トランス2次電圧380V×2を利用しました。ピークで1000V少しあることになりますが。0.01μFのコンデンサーでも50Hzではリアクタンスが大きいせいかスライダックで130V入力にしても放電が始まりません。ブロッキング発振のように急峻な立ち上がりがあればリアクタンスも下がります。i=△Q/△t=C△V/△t ここで△V/△tを大きくするために手持ちのトライアック制御の電圧可変装置(昔作ったものなのでノイズ源なのですが)を使ったところうまくいきました。これで水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、酸素、窒素の放電実験が可能になりホッとしています。基板は上橋さんのコピーです。有難うございました。

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    1. 渡辺聰明さん
      高電圧発生装置、作られたのですね。
      私の実験がきっかけとの嬉しいお言葉を下さってありがとうございます。本当に嬉しいです。
      水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、酸素、窒素の放電実験 凄いですね・・・実験の様子 見てみたいです。
      こちらこそ、嬉しいご報告を下さって、また意欲がわいてきました。本当にありがとうございます♪

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