2020年2月4日火曜日

高速回転のクリップモーターと直径10cmのクリップモーター

クリップモーターと言えば、電気工作の定番ですが
バランスや接触など難しい問題が多々あり、
結構ハイレベルな工作だと思っています。

最近、クリップモーターのことが話題になり、
私も久しぶりに作ろうと材料を引っ張り出してきて色々とやってるうちに
軸に待ち針、軸受けにネオジム磁石を使うことで
高速回転するクリップモーターを思いつきました。
以前、通常の方法で作ったクリップモーターと比較すると
約2倍の速さで回転します。

待ち針を使うので、子供向けの工作としては難しいですが、
ビュンビュン回転する様子は面白いと思います。
(映像ではあまりビュンビュンの様子がわかりにくいですが・・・)

<作り方>
直径2cm前後の円柱状のものに
 φ0.35mmのUEW(ポリウレタン銅線)を20~40回程度巻き付け、
両端は約10cm程度残してカットします。
下の写真の右のような待ち針の球を外して
尖った方を上にしてコイルの中心に通します。

 ②
 コイルの端を針とコイルを固定するように巻き付けます。
固定し終えたら、被覆を剥がします。
上は全ての被覆を、下は右半分又は左半分を剥がします。



上の被覆を全て剥がしたところは、針にしっかりと巻き付けます。
ここが緩いと、コイルに電流が流れにくいので要注意です。
下は3cm残してカットします。

 土台の方は、ダイソーの5mm厚のスチロール板で作りました。
電源は単3アルカリ乾電池1本です。

回転用にはダイソーのφ20mmのフェライト磁石を使用しています。
φ13mmのネオジム磁石でもやってみましたが、
ほんの少しネオジム磁石の方が速いかな?程度でした。


(下写真左)電極はφ0.9mmの銅針金をW型に折り曲げてリード線をハンダ付け、
押さえ用のU字型のものはφ0.35mmのUEWを使用しました。
(下写真右)リード線のもう一方の端は被覆を剥いてアルミホイルでくるんでいます。

このアルミホイルは電池のマイナス極の方にテープで貼ってもいいのですが
この写真のように、磁石でくっつけた方が接触が良く通電しやすいと思います。

W型、U字型はスチロール板に埋め込み
コイルの端を写真のようにセットします。

電池のプラス極の方にφ6mm×3mmのネオジム磁石を斜めにくっつけ
この磁石にコイルの針の先端をくっつけました。
ネオジム磁石はニッケルメッキされているので
電池のプラス極~ネオジム磁石~針~コイルへ電流が流れます。


当初、下の写真のようにネオジム磁石と針が垂直に接触するようにしていました。
これでも回転するのですが、
5~10分くらい経つと 急に停止してしまうことが多々ありました。
原因は不明ですが、上のように斜めにすることでかなり改善されました。


またφ13mm×3mmのネオジム磁石を使用すると もう少し安定するかも知れません。
このネオジム磁石も回転力への影響があるかも?と思いましたが、
N極、S極を入れ替えても回転数はそれほど変化しなかったので、
電磁回転力への影響は少ないのかな?と思います。

実際に作られるときは、このネオジム磁石のところを
色々と変えてやってみて下さい。

乾電池のプラス・マイナス(=コイル両端)の電圧波形をとってみました。


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電池の寿命ですが
新品の乾電池(約1.6V)を使って実験すると
1時間後に約1.4Vまで下がります。
さらに1時間後には約1.3Vくらいになります。
速度も少しずつ落ちますが、
それでも通常のクリップモーターに比べるとかなり速く回転します。

もし途中で、回転が遅くなったり停止したときは、
・電池を5分くらい休ませる(コイルは外した状態で)
・電池に貼ったネオジム磁石を少し動かす(角度を変える)
・W型の電極の角度を変える
・コイルと電極の接触しているところに接点復活剤を使用する
等でまた勢いよく回転すると思います。

ただ、電池電圧が1.2Vくらいまで下がると
これ以上は難しいかも知れません。
(電池を休ませながら0.7Vまで回転したものもありますが・・・)

いざ作ってみたものの、そのとき そのときで違う現象が現れ
原因がよくわからないまま終わってしまい、
いい加減なことを書いていたら申し訳ありません。

やはりクリップモーターはハイレベルで奥が深い工作だと痛感しました。
いつかまた新バージョンにチャレンジしてみたいと思います。

<クリップモーターが回転する理由について>
以前まとめた資料です。


<なぜ半分なのか?>
下の図は真横から見たところです。
黄色い丸の周囲のオレンジ色が被覆されてるところ、
オレンジ色のないところが被覆を剥がしたところです。
(被覆をちょうど半分剥がした場合です)

シルバーはクリップの電極、
軸はφ2mm程度の場合です。

半分剥がした状態では、コイルが真横の位置になると電流は流れません。
上図の中3つの場合は電流が流れ、電磁力が発生します。
特に図の真ん中のときが最も多くの電磁力が発生します。

もし剥がすのが半分以下だと電磁力を得られる期間が短くなります。
剥がしすぎると、逆向きの回転力が発生し、
回転速度が遅くなったり、次第に止まってしまうときもあります。

しかし、上図は理想的な図で
コイルが図のように横から見て反時計回りに回転すると
コイルは電極の右の方へ移動します。
すると下図の一番左のように右向きの電磁力が発生することも考えられます。

これを防ぐには、
少し角度をつけて半分剥がすといいかも知れませんが
電極のカーブや回転方向まで考慮してその角度を決めるのは難しそうです。
剥がすのを半分以下にするか?
電極をフラットにしサイド部分を絶縁体にしてもいいかもしれませんね。

さらに速く回転させた場合は特に
コイルは上下左右に振動しながら回転します。
振動してジャンプした時に、被覆を剥がしたところが、
下図のように電極に接触した場合も右向きの電磁力が発生してしまいます。

なるべく振動を抑える工夫や
振動しても上図のような誤接触をおこさないように
上で書いたように電極のサイド部分を絶縁体にしてもいいかも知れませんね。

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<2020年2月9日 追記>
直径10cmのクリップモーター
Facebookで懇意にさせて頂いている、青森・野呂茂樹先生が
直径10cmの大きなクリップモーターを作成されているのを拝見し
https://www.youtube.com/watch?v=b2ctzHiH_JY
私も作ってみました。


上記で記載したのと同様、軸に針、軸受けに磁石を使用しました。
両側は取り付け金具を使用しています。
コイルはφ0.35mmのUEWを30回巻きにしたものです。
巻き数が多い方が回転トルクが増します。
(10回巻き以上では回転速度はあまり変わらない)

<2020年2月13日 追記>
直径10cmのアルミ針金1巻きのクリップモーター
ダイソーで販売されているアルミの針金1巻きのものも作ってみました。
横に伸ばした軸のところを細い銅線にすることで摩擦抵抗が軽減され
直径10cmもの針金がマンガン電池1個でも回転します。
勿論、アルカリ電池を使ったり、強力な磁石を使うともっと速く回転します。

<コイルの作り方>
 φ1mm~φ2mmのアルミの針金をこのように曲げます。
φ1mmの方が軽くてよく回ります。

アルミの針金はコーティングされてるので、
絶縁されてると思ってしまいますが、
ある程度 電流を流してしまいます。
そのため、アルミ針金同士が接触するところは
テープを巻いて絶縁してから(白く見えてるのがテープです)
φ0.35mmのUEWで写真のように固定します。
両端は1.5cmほど残して切り落とし、
コーティングはカッターナイフなどで剥がします。
(ある程度電気を流すとは言え、完全に剥がした方が確実です。)

コーティングを剥がしたところに
(右)φ0.55mの銅の針金を10回程度巻き付けます。
(左)φ0.55mmのUEWは長い部分の被覆を全て剥がしてから巻き付けます。

(左)UEWを巻き付けた後、被覆を半分剥がします。

コイルを乗せるところは銅箔テープを折り曲げ、
取り付け金具に貼り付けました。
取り付け金具の穴そのまま使っても回りますが、
酸化被膜ができやすく、その度に接点復活剤を使っていました。
この 銅箔テープを使うと、このような処理を長時間しなくても回り続けます。

φ1mmのアルミ針金
マンガン電池1本(電池電圧1.51V)
回し始めてから30分後に停止(電池電圧1.37V)

マンガン電池2本(電池電圧1.37Vと1.39V直列)
回し始めてから1時間40分後に停止(電池電圧0.89Vと1.16V)
でした。